フェノール豚レインのチラシの裏

なんか書き散らかす

わたしのイチオシきらら:本日わたしは炎上しました

(本記事はまんがタイムきらら独立創刊20周年企画「わたしのイチオシきらら」に投稿した感想文です。)

まんがタイムきらら創刊20周年おめでとうございます。この20年間、数多くの作品が世に出ました。ある作品はドラマCD化、ある作品はアニメ化、また、とある作品は2巻で幕を閉じ、単行本化すらされず歴史から消えた作品もあります。今回、感想文を書くにあたって、私は敢えて単行本化されずひっそりと消えた「本日わたしは炎上しました」(著:どげざ、まんがタイムきららMAX2018年4〜8月号連載)について感想文を書きたいと思います。
何故「本日わたしは炎上しました」を感想文の題材として選んだかというと、2018年当時でいち早く動画サイトの投稿者という題材を選んだ先進性とわずか5回の掲載で原因不明の連載終了という数奇な運命を辿ったことが印象的だったからです。きららの歴史からひっそりと消えた作品ですが、素晴らしい作品には変わりないと思い、風化することがないように感想文の題材として取り上げ、後世に伝えるべく筆を取りました。
この作品を知らない読者のために向けて、「本日わたしは炎上しました」がどんな作品か簡単にまとめると、「好きなことで生きていく」、ミーチューバーの王者キタピンの言葉が人々を動画サイトミーチューブに駆り立てた!
主人公の「カナエル」こと由愛カナエもミーチューバーとして夢を叶えようとするが、そのやり方があまりにも悪辣!王者キタピンにすらケンカを売り、炎上も厭わないストロングスタイルで大物ミーチューバーを目指すも・・・というあらすじです。
この作品の特筆すべき点は、2018年時点で迷惑系YouTuberやVTuberまで取り上げているスピード感と先進性です。2010年代後半は動画サイトの広告収入を得るインフルエンサーが一般化した頃であり、2023年現在一大コンテンツとなったバーチャルYouTuberの文化が拡大したころです。当時最もホットな題材にいち早く目を付けたどげざ先生のアンテナの高さは素晴らしいと感じています。また、題材の先進性だけでなく、一話完結で悪いことをすると報いが来るというわかりやすさと教訓を体現するメッセージ性も本作の素晴らしい点だと思います。主人公の由愛カナエがしょーもない悪巧みをしては最後には因果応報を受けてオチがつく流れは安心感すら感じられます。由愛カナエだけが突出しているかというとそうではなく、キタピン信者の「あいあい」こと思井アイやカナエ大好き(重め)な「ゆりにゃん」こと多田ノユリといったライバルミーチューバーの倫理観もだいぶアレで、挙げ句相棒の原クロイもカナエの裸が好きでカナエを軽率に裏切るため、カナエの倫理観が一周まわってまともに見えるところがまたこの作品を飽きずに読めるスパイスとなっています。(由愛カナエはまともではないが)倫理観ゼロなキャラクター同士の非常に低い次元での掛け合い漫才が成立しているところが本作の良さと言えるでしょう。
最後に、連載当時一番熱かった動画サイトのインフルエンサーを題材としていて初回からインパクトがあったため、このままきららMAXの中堅層を担う名作になると思っていましたが、2018年9月号で突如休載し、そのまま「原因不明の」連載終了となってしまったのが個人的に悲しかったです。本日わたしは炎上しましたは「1クールのレギュラーより1回の伝説」ならぬ「2巻のレギュラーより5回の伝説」という言葉がふさわしい名作だと個人的に考えています。関係ないですが、自分も過去の発言に責任を持ち、特定の人種を貶める発言をしないように襟を正したいと思います。「因果応報」という言葉がふさわしいそんな作品です。